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制作・評価

Shook Ones Pt. IIを深掘り——Pt. Iからの上書きと、Herbie Hancockのサンプルの謎

Mobb Deep「Shook Ones Pt. II」の制作と評価を掘り下げる。なぜ「Pt. II」が決定版になったのか、長年謎だったあのピアノループの正体(Herbie Hancock「Jessica」)、Billboard 200最高3位、8 Mile、そして「ラップの試金石」と呼ばれるまでの軌跡。

by BlackTiger

Shook Ones Pt. II は、リリックの密度もさることながら、出来上がるまでの経緯とその後の評価のされ方が、それ自体ひとつの物語になっている。曲ページではスラングと言葉遊びを精読したので、こちらでは「どう作られ、どう語り継がれたか」を分けて掘り下げてみたい。

なぜ「Pt. II」が決定版になったのか

タイトルが「Pt. II」なのは、文字通り Pt. I が先にあったからだ。1994年の「Shook Ones」(=Pt. I)は、いま誰もが知るあのピアノループとはまったく別のビートで、これが大きくは跳ねなかった。

そこでHavocがビートを丸ごと差し替えて作り直したのが、この Pt. II です。Pt. II は Pt. I のヴォーカル("shook ones" のフレーズ)を引っぱってきて自己サンプリングしていて、続編というより「上書き」に近い。結果として、95年の『The Infamous』に収まったこちらが完全な決定版になり、Pt. I はマニア以外ほぼ顧みられなくなった。同じ曲の作り直しで歴史が変わってしまうのが、いかにもヒップホップらしい逆転だと思う。

あのピアノループの正体 — Herbie Hancock「Jessica」

Pt. II のあの不穏なピアノループ。これが何をサンプリングしているのか、長年ヒップホップファンの間で謎だった。最終的に、Herbie Hancockの「Jessica」(1969年のアルバム『Fat Albert Rotunda』収録)のわずか数秒をピッチダウンし、チョップして引き伸ばしたものだと判明している。

浮遊感のある美しいジャズの旋律を、サンプラーの粗い質感で、息の詰まる「QBの空気」へ変えてしまったHavocの手腕。ほかにもQuincy Jones「Kitty With the Bent Frame」、オーストラリアのDaly-Wilson Big Band「Dirty Feet」のサンプルが重ねられている(いずれもWhoSampledで確認できる)。素材が何かより、どう使うか——この曲はその一番わかりやすい実例です。

チャートと、世界に広がるきっかけ

曲を収めた『The Infamous』は1995年にBillboard 200で最高3位を記録した。ハードコアなNYヒップホップが、メインストリームのチャート頂点圏に届いたことを示す数字です。

そして知名度を世界規模に押し上げたのが2002年の映画『8 Mile』。冒頭のラップバトルのビートにこの曲が選ばれ、Eminemが相手の出だしを潰す——いや、正確には、映画の主人公がこのビートでバトルに挑むものの、緊張で一言も出ないまま固まって負ける、あの有名なオープニングシーンです。ここで初めてShook Ones Pt. IIを耳にした人も多い。

「Shook Onesのビートで自由にラップできるか」

この曲は、時間が経つほど評価が上がっていったタイプの曲だ。90年代にリアルタイムで聴いたとき、2000年代に8 Mile経由で出会ったとき、そして2010年代以降にヒップホップの歴史を振り返る文脈で再評価されたとき——それぞれの場面で、新しい意味が積み重なっていった。

ヒップホップ界では「Shook Ones Pt. IIのビートの上でラップできるか」が、一種の実力試験のように扱われることがある。それくらい、このビートと歌詞の密度は別格だ。Eminemが8 Mileでこのビートを選んだのも、そういう文脈があってのことだと思う。

Prodigyは2017年、鎌状赤血球症の合併症で亡くなった。それでも、彼が19歳で書いた「my mind is older」の一行は、いまも引用され続けています。

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