One9監督による2014年のドキュメンタリー『Time Is Illmatic』を解説。Nasのデビューアルバム『Illmatic』の制作背景、クイーンズブリッジの現実、そして名盤が残した影響を事実ベースで読み解く。
『Time Is Illmatic』は2014年に公開されたドキュメンタリー映画だ。監督はOne9、脚本・プロデュースにはErik Parkerが関わっている。ヒップホップのMC、Nas(ナズ)のデビューアルバム『Illmatic』(1994)の制作背景と、その音楽が生まれた環境を追った作品である。
映画は『Illmatic』のリリース20周年というタイミングで公開され、2014年のTribeca Film Festival(トライベッカ映画祭)のオープニング作品として上映された。[要確認: 公開日・配給の詳細]
『Illmatic』は1994年にリリースされたNasのデビューアルバムだ。ニューヨーク・クイーンズの公営住宅クイーンズブリッジ(Queensbridge)の現実を、緻密なリリックと一流プロデューサー陣のビートで描き出し、ヒップホップ史上もっとも重要なアルバムのひとつとして繰り返し評価されてきた。
本作の代表曲のひとつが「N.Y. State of Mind」だ。ニューヨークのストリートの緊張感をそのまま音にしたようなこのトラックは、アルバムの世界観を象徴している。あわせて「Nas Is Like」のように、Nasのキャリアを語るうえで欠かせない楽曲も当サイトで解説している。
『Time Is Illmatic』は、『Illmatic』の楽曲がどのような環境から生まれたのかを、Nas本人や周囲の人物の証言を通じて描く。クイーンズブリッジというコミュニティ、家族、そして1980〜90年代のニューヨークが抱えていた社会的な現実が、アルバムの背景として浮かび上がる。
Nasの父であるジャズ・ミュージシャンOlu Dara、そして弟Jungle(Jabari Fret)といった家族の存在も、Nasの音楽性を形づくった要素として描かれる。[要確認: 映画に登場する具体的なインタビュイーの一覧]
『Illmatic』を理解するうえで欠かせないのが、Nasが育ったクイーンズブリッジの環境だ。アメリカ最大級の公営住宅として知られるこの地区は、貧困や暴力といった厳しい現実を抱える一方で、数多くのヒップホップ・アーティストを生み出した土壌でもあった。
ドキュメンタリーは、こうした環境がNasの観察眼と言葉にどのように刻み込まれたかを掘り下げる。アルバムの一曲一曲が、特定の場所と時代から生まれた記録であることを示す構成になっている。
1994年はニューヨーク・ヒップホップの黄金期と呼ばれる時期にあたる。『Illmatic』はその頂点を象徴するアルバムのひとつであり、リリック中心主義とサンプリングを基盤としたサウンドの完成形として位置づけられてきた。
『Time Is Illmatic』は、単に名盤を称えるだけでなく、その音楽が生まれた社会的・個人的な条件を記録することで、ヒップホップというジャンルが「どこから来たのか」を考えさせる作品になっている。Nasの歩みについては、当サイトのNasのアーティストページもあわせて読んでほしい。
『Time Is Illmatic』(2014)を日本国内のVODサービスで視聴できる場合があります。配信状況は時期により変動するため、最新の取り扱いは各サービスでご確認ください。
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ドキュメンタリーと合わせて、Nasのデビューアルバム『Illmatic』そのものもチェックしたい。
『Time Is Illmatic』は、ヒップホップ史に残る名盤『Illmatic』がいかにして生まれたかを、クイーンズブリッジの現実とともに記録したドキュメンタリーだ。アルバムを聴き込んできた人にとっても、これから聴く人にとっても、楽曲の背景を立体的に理解できる一本である。
まずは「N.Y. State of Mind」の和訳から、『Illmatic』が描いた世界に触れてみてほしい。