この記事の見どころ
元ネタ
(Sound of a striking gong followed by the continuous, echoing Shelly Manne water drop loop) Uh-oh! Heads up! Uh-oh! Heads up 'cause we're dropping some shit!
(銅鑼を打つような音が響き、続いてシェリー・マンの水滴のループ音がこだまする) アッオー! 気をつけな! アッオー! 気をつけな、俺たちがヤバいモンを落とすぜ!
★ 知性vs暴力——パンチラインの極致
You wanna front—what? Jump up and get bucked If you're feeling lucky duck then press your luck I snatch fake-gangster emcees and make 'em faggot flambé Your nine spray, my mind spray Malignant mist that'll leave comp defunct The result's your remains stuffed in a car trunk You couldn't come to the jungles of the East popping that yang You won't survive get live catching wreck is our thing I don't gang bang or shoot out bang bang The relentless lyrics the only dope I slang I'm a true master, you can check my credentials 'Cause I choose to use my infinite potential Got a freaky, freaky, freaky freaky flow Control the mic like Fidel Castro locked Cuba So deep that you can't scuba dive My jive's origin is unknown like the Jubas I've accumulated honeys all across the map 'Cause I'd rather bust a nut than bust a cap In your back in fact my rap snaps your sacroilliac I'm the mack so I don't need to tote a Mac My attack is purely mental and its nature's not hate It's meant to wake ya up out of your brainwashed state Stagnate nonsense, for if you persist You'll get your snotbox bust you press up on this I flip, hoes dip, none of the real niggas skip You don't know enough math to count the mics that I've ripped Peep the Dirty Rotten scamp as his verbal weapons spit
見栄を張りたいって? なんなら飛びかかってこい、蜂の巣(Bucked)にされてみな 自分がツイてるカモだと思うなら、運試しでもしてみろよ 俺はフェイクなギャングスタ気取りのMCを引っ捕まえて、丸焼きのフランベにしてやる お前は9ミリ拳銃をブッ放す(Nine spray)、俺は精神の銃弾をブッ放す(Mind spray) この悪性の霧(Malignant mist)は、競争相手(Comp)たちを完全に機能停止に追い込む 結果、お前らの死体は車のトランクに詰め込まれることになる イースト(東海岸/ブルックリン)のジャングルに来て、そんな戯言を抜かすことは許されないぜ お前じゃ生き残れない。ここで大暴れして(Catching wreck)場を完全に制圧するのが俺たちのやり方だ 俺はギャング活動もしないし、バンバンと無意味な銃の撃ち合いもしない 俺が売り捌く(Slang)唯一の麻薬(Dope)は、この容赦ないリリックだけだ 俺は真のマスターだ、俺の経歴(クレデンシャル)を調べてみろ なぜなら俺は、自分自身の無限の可能性(知性)を使うことを選んだからだ フリーキーで、フリーキーな、予測不能な異常なフロウを持ってる フィデル・カストロがキューバを完全に掌握したように、俺はマイクをコントロールする お前がスキューバダイビングできないほど、俺の思考は深いぜ 俺のジャイブ(言葉/スタイル)の起源は、ジューバ・ダンス(Jubas)のように未知で深い領域にある 俺は地図上のあちこちで、いい女(Honeys)を集めてきた なぜなら、俺はお前の背中に弾丸をブチ込む(Bust a cap)より、ベッドで精を放つ(Bust a nut)方が好きだからな 実際、俺のラップはお前の骨盤(仙腸関節=Sacroiliac)をへし折るほどの威力を誇る 俺はマック(凄腕の魅力的な男)だから、Mac-10(サブマシンガン)を持ち歩く必要なんてないんだ 俺の攻撃は純粋に精神的なものであり、その本質は決して憎悪ではない お前らを、その物質主義に洗脳された状態から目を覚まさせるためのものだ 停滞したナンセンスだ、もしお前がこれ以上しつこくするなら 俺に突っかかってきた結果、鼻の骨(Snotbox)をへし折られることになるぞ 俺がフロウをフリップ(展開)させれば、女たちは熱狂し、本物のハスラーたちも決して曲を飛ばさずに聴く お前には、俺がこれまで引き裂き、破壊してきたマイクの数を数えるだけの数学(Math)の知識もないだろう 見とけよ、このDirty Rotten(汚い悪党)の悪童が、言葉の武器を吐き出す様を
★ Run Run Shaw vs カンフー・スタイル
Real, rough and rugged, shine like a gold nugget Every time I pick up the microphone I drug it Unplug it on chumps with the gangster babble Leave your nines at home and bring your skills to the battle You're rattling on and on and ain't saying nothing That's why you got snuffed when you bumped heads with Dirty Rotten Have you forgotten, I'll tap your jaw I also kick like kung fu flicks by Run Run Shaw Made frauds bleed every time I g'd Cause I've perfected my drunken style like Sam Seed Pseudo psychos, I play like Michael Jackson When I'm busting ass and breaking backs Inhale the putrified aroma Breathe too deep and you'll wind up coma Toast the king I'm hard like a fifth of vodka And bring your clique cause I'm a hard rock knocker I gotcha out on a limb, about to push you off the plank Let you draw your chronz but your burner shot blanks When the East is in the house, you should come equipped
リアルで、ラフで、荒々しく、金塊(ゴールドナゲット)のように眩く輝く 俺がマイクを手に取るたび、俺はそれに薬を盛る(ドラッグのように強力な中毒性を持たせる) ギャングスタの戯言(バブル)を垂れ流す間抜け共の生命維持プラグを引き抜いてやる 9ミリ拳銃は家に置いてこい、バトルにはお前の「スキル」を持ってこい お前らはペチャクチャと喋り続けてるが、中身は何も言っちゃいないんだ だからこそ、Dirty Rotten(俺たち)と鉢合わせた時にお前はブッ飛ばされたんだ 忘れたのか、お前の顎をカチ割ってやるぞ それに俺のキック(ラップの蹴り)は、ラン・ラン・ショウのカンフー映画みたいに強烈だ 俺がギャングスタ(G)に振る舞うたび、偽物どもを出血させてきた なぜなら俺は、サム・シード(蘇化子)のように「酔拳スタイル」を完璧にマスターしたからな エセ・サイコ野郎ども、俺はマイケル・ジャクソンみたいに軽快にプレイするぜ お前らのケツを蹴り上げ、背骨をへし折る時にな この腐敗した香り(プトリファイド・アロマ)を吸い込んでみろ 深く吸い込みすぎると、そのまま昏睡状態(コーマ)に陥るぞ 王に乾杯しろ、俺はウォッカのボトル(fifth of vodka)のようにハード(度数が高い/タフ)だ お前の仲間(クリック)を全員連れてこい、俺はハードロック(タフガイ)を打ち負かす男だからな お前を崖っぷち(枝の先)に追い詰め、今にも海賊船の板から突き落としてやる お前の武器(chronz/銃)を抜かせてやるが、お前のバーナー(銃)は空砲しか撃てないぜ 東海岸(East)が現場にいる時は、しっかり装備(スキル)を整えてこいよ
Uh-oh! Heads up 'cause we're dropping some shit! Uh-oh! Heads up 'cause we're dropping some shit! Uh-oh! Heads up 'cause we're dropping some shit! Uh-oh! Heads up 'cause we're dropping some shit! Uh-oh! Heads up 'cause we're dropping some shit!
アッオー! 気をつけな、俺たちがヤバいモンを落とすぜ! アッオー! 気をつけな、俺たちがヤバいモンを落とすぜ! アッオー! 気をつけな、俺たちがヤバいモンを落とすぜ! アッオー! 気をつけな、俺たちがヤバいモンを落とすぜ! アッオー! 気をつけな、俺たちがヤバいモンを落とすぜ!
1990年代初頭のブルックリン
Jeru the Damajaが育ったイースト・ニューヨークは、1970年代からのリンドン・B・ジョンソン政権下における赤線引き(レッドライニング)とサブプライム住宅ローン詐欺により、インフラが完全に崩壊していた。1980年代後半から1990年代にかけてのクラック・コカイン蔓延は、この地域を「キリング・フィールド(死の地)」と化した。しかしネヘミア住宅プログラムやスターレット・シティのような公営団地が、住民自身の手によるコミュニティ主導の都市再生を象徴していた。Jeruの「ストリートの冷酷な現実を知り尽くしながらも、安易な暴力には屈しない」という強靭な精神性は、この絶望と再生のコントラストから直接生み出されたものである。
Gang Starr Foundation
Jeruはゲットー出身の革命家Guru、プロデューサー天才DJ Premierからなるデュオ「Gang Starr」を中心とするコレクティヴ「Gang Starr Foundation」のコアメンバーとして登場した。このファウンデーションには、Big Shug、Group Home、Afu-Ra、M.O.P.、Freddie Foxxといった、後に東海岸ハードコアを牽引する重鎮たちが名を連ねていた。1989年に自身のグループ「Dirty Rotten Scoundrels」を結成してスキルを磨き、1992年のGang Starrの楽曲「I'm the Man」でレコードに初めて声を刻んだJeruは、この「Come Clean」で歴史的なパラダイムシフトをもたらす。
五パーセント・ネイション
1964年にクラレンス13Xによって創設された五パーセント・ネイション は、「Supreme Mathematics」や「Supreme Alphabet」という独自の数秘術と暗号言語を用い、黒人男性を「神(God)」、黒人女性を「地球(Earth)」と定義した。Jeruのリリックに散りばめられた「Math(数学)」や「Sun toucher(太陽に触れる者=至高の知識を持つ者)」といった用語は、この思想に根ざした「Knowledge of Self(自己認識)」の探求を示している。彼は銃声を響かせる代わりに、この高度な精神性(Mental Stamina)と数学的知性を武器に選んだのである。
制作秘話 01
当時、この奇妙な音の正体は長らくヒップホップ界最大の謎の一つとされていた。DJ Premierは後年、西海岸の伝説的ジャズ・ドラマーであるShelly Manne(シェリー・マン)のレコードからサンプリングされたものであることを種明かしている。Premierがドラムブレイクを探してレコードの溝に針を落としていた際、A面の最後尾に収録されていた「Space」というごく短いインタールード(幕間)のトラックを発見した。そこに含まれていたパーカッションが不規則に響く一瞬の音色を切り取り、ピッチを調整してループさせることで、ヒップホップ史上最もアイコニックで不穏なリフが誕生したのである。
制作秘話 02
DJ Premierがこのビートを完成させていた際、ヒップホップ界の確立した大御所スーパースターであったLL Cool Jと敏腕A&R・マネージャーのChris Lightyが、新しいアルバムのためのビート提供を直接依頼した。しかしPremierは、「今はJeruのためのデモ音源を仕上げる約束があるから、待ってくれ」と言い放ち、スーパースターであるLL Cool Jのオファーを後回しにしてまで、この無名のブルックリンのMCのビートメイキングを優先した。この判断は、後に東海岸ルネサンスを決定づけることになる。
制作秘話 03
元々「Come Clean」は、Guruが新たに立ち上げたインディペンデント・レーベル「Ill Kid Records」のためのプロモーション用デモ音源として制作されたものに過ぎなかった。ニューヨークのストリートの絶対的重鎮DJであるFunkmaster Flexが、この荒削りな音源をラジオ局「Hot 97」でプレイしたところ、リスナーから電話回線がパンクするほどの爆発的な反響が巻き起こった。この圧倒的なストリートの支持が決定打となり、Jeru the Damajaはメジャー流通網を持つPayday/FFRR Recordsとの大型フルアルバム契約を勝ち取ることになるのである。
Boom Bapの永遠化
「Come Clean」は、その後1994年に爆発するニューヨーク・ヒップホップのルネサンスの完璧な前哨戦となった。Nasの『Illmatic』(1994年)、Wu-Tang Clanの『Enter the Wu-Tang (36 Chambers)』(1993年)、The Notorious B.I.G.の『Ready to Die』(1994年)といった、ニューヨーク・ヒップホップ黄金期を形成する名盤群への完璧な前触れとして機能しながら、同時に「Boom Bapの真髄」を世界に再定義する歴史的モニュメントとなったのである。
Jeru the Damaja
Brooklyn, New York · 1992–
ブルックリン出身のDJ Premier門下生。高い倫理観と意識的なリリックで東海岸復権を象徴するラッパーのひとり。