WAX&THINK

I Can — Nas 和訳・スラング解説

アーティスト
Nas
リリース年
2002
プロデューサー
Salaam Remi
収録アルバム
God's Son
エリア
NY
BPM
87
サンプル元
Beethoven "Bagatelle No. 25 in A minor (Für Elise)" (1810) / The Honey Drippers "Impeach the President" ドラム (1973) / 映画『星の王子ニューヨークへ行く』(1988)「She's Your Queen-To-Be」

この記事の見どころ

  1. 01 Nasが子供たちに語りかける珍しいクリーンな一曲——歌詞が平易で、英語学習の最初の一歩に最適
  2. 02 modal can・listen up・the company you keep・act your age——日常で本当に使う英語を「学ぶ表現」単位で解説(PV頭出しリンク付き)
  3. 03 ベートーヴェン「エリーゼのために」+最も有名なドラムブレイク「Impeach the President」をSalaam Remiが料理

[PR] メルカリで探す

元ネタ

解説

■英語が苦手な人の"最初の一曲"に

ヒップホップで英語を学ぶとき、最大の壁はスラングと早口、そして explicit(露骨)な語彙です。その点この「I Can」は例外中の例外。Nas(ナス)がはっきりと、ゆっくりめに、しかも子供たちに向かって語りかけるため、歌詞が驚くほど平易で聞き取りやすい。

実際この曲はアルバムの中で唯一 Parental Advisory(保護者向け警告)の付かない、放送に乗せられるクリーンな作りになっています。フックを歌うのも子供たちの合唱団。「I know I can, be what I wanna be(僕にはできる、なりたい自分になれる)」という、英文法の教科書みたいにシンプルな一文が繰り返される。

だからこそ、modal(助動詞)の can、命令の listen up、ことわざ的な the company you keep、そういう「日常で本当に使う英語」を、構えずに拾える一曲なんです。

■やさしい言葉で、重いテーマを

2002年録音、アルバム『God's Son』(2003) からのシングル。プロデュースは Salaam Remi(サラーム・レミ)。土台はクラシックの超有名曲、ベートーヴェンの「エリーゼのために」です。

ただし英語が易しいからといって、中身が薄いわけではまったくない。ドラッグの恐ろしさ、背伸びして大人の世界に踏み込む危うさ、そして奴隷制以前のアフリカの歴史まで、子供向けの言葉づかいのまま、ずしりと重いテーマを順番に語っていく。

やさしい英語で深い話をする、という意味で、これは"読みやすい良書"みたいな一曲だと思います。最後の Afrocentrism。アフリカ系の歴史・文化を中心に世界史を捉え直し、黒人としての誇りを取り戻そうとする思想・運動 (アフリカ中心主義)の歴史語りには議論のある主張も混じりますが、そこは「Nasが何を伝えようとしたか」として読み解いていきます。

ストーリーの流れ — まず曲全体をつかむ

この曲は、Nasが子供たちに順番に「人生の授業」をしていく構成です。3つのバースがそれぞれ別のテーマを持っているので、先に流れを押さえておくと、一語ずつ拾うときに「今どの授業の話か」が見えて迷いません。

まずフック。子供たちの合唱が「I know I can, be what I wanna be, if I work hard at it(頑張れば、なりたい自分になれる)」と歌う。これが曲全体を貫く"おまじない"であり、各バースのあとに必ず戻ってくる芯になっています。

Verse 1は、ドラッグの話。歌手を夢見た美しい女性が、付き合う相手を間違えてヘロインに溺れ、若くして心身を壊していく。「付き合う仲間を選べ(watch the company you keep)」という、具体的で生々しい警告だ。Verse 2は、まだ10代なのに背伸びして大人の世界に入ろうとする少女・少年への忠告。「歳相応に振る舞え(act your age)、時間をかけて成長しろ」と諭す。

そしてVerse 3で視点が一気に歴史へ飛ぶ。「この国(アメリカ)に連れてこられる前、俺たちは王であり女王だった」。奴隷制以前のアフリカ、クシュ王国やティンブクトゥの学問の都を引き合いに、黒人の子供たちに誇りを取り戻させようとする。最後は「顔を上げろ、少年、お前は王だ(you're a king)」「いつか花嫁になる少女よ、お前は女王だ」と、一人ひとりを王と女王に戻して締めくくる。やさしい語り口のまま、最後に大きな物語へ着地させる構成に、初めて聴いたとき素直に胸を打たれました。

※本ページは批評・教育目的で、解説に必要な範囲の断片のみを引用しています。全歌詞の対訳は掲載していません。

学ぶ表現 — 日常英語・イディオム・文化

各見出しは「この曲から学べる英語表現」。各ユニットはまず上に英語の用例(1〜2行)を置いてあります。先に英語を音で追い、行のどこが学習対象かを確かめてから下の日本語解説に進むと、英語が苦手でも置いていかれません。

I know I can — 助動詞 can で組む自己肯定の一文

★ 文法(基礎)
Children's Choir(イントロ&フック) ≈0:05

I know I can, be what I wanna be
If I work hard at it, I'll be where I wanna be

僕にはできるって分かってる、なりたい自分になれる/頑張れば、行きたい場所にたどり着ける

▶ 曲の冒頭、子供たちの合唱で始まり、各バースのあとに必ず戻ってくるフック。

まず上の2行を口に出してみてください。中学英語の総まとめみたいな、きれいな構文です。鍵は助動詞 can(〜できる)。I know I can は「自分にはできると分かっている」、I wanna beI want to be(なりたい)のくだけた形。後半は If I work hard at it(それに一生懸命取り組めば)という conditional。「もし〜なら」を表すif節と、その結果を表す主節からなる文。ここはif現在形+will未来形の典型形 (条件文)+ I'll(I will=未来)の組み合わせ。「努力すれば望む場所に行ける」という、英語学習者がそのまま暗唱したくなるお手本の一文です。Nasがこれを子供たちに合唱させたのには、英語のリズムで前向きさを刷り込む狙いがある。

語法 — どう使うか ▼

work hard at ~ は「〜に熱心に取り組む」。前置詞 at が「努力の対象(一点)」を指す。work hard at school(学業に励む)、work hard at your English(英語を頑張る)のように使う。

wanna(=want to)、gonna(=going to)、gotta(=have got to)は、会話・歌詞で超頻出の短縮形。意味はもとの形と同じだが、発音をそのまま綴っている。リスニングではこの形で耳に入ってくるので、音とセットで覚えておくと聞き取りが一気に楽になる。

B-boys and girls, listen up — 呼びかけと命令の listen up

★ 文化/句動詞
Nas(各バース冒頭) ≈0:26

B-boys and girls, listen up
You can be anything in the world

B-boyたち、女の子たち、よく聞いて/君は世界で何にだってなれる

▶ 各バースの冒頭でNasが子供たちへ呼びかける決まり文句。

各バースは、この呼びかけで始まります。B-boys はもともと「break-boys=ブレイクダンスを踊る少年」を指すヒップホップの言葉で、転じて「ヒップホップ世代の若者・男子」全般を指します。ここでは女の子(girls)と並べて「ヒップホップで育つ子供たちみんな」への呼びかけ。続く listen up は「注目して聞け・よく聞いて」という phrasal verb。動詞+副詞/前置詞がセットで一つの意味になる表現。listen upで「しっかり耳を傾ける」 (句動詞)。up が「しっかり・きちんと」という強めの意味を添えていて、ただの listen より「集中して聞け」のニュアンスが強い。先生が教室で使うような、呼びかけの定番表現です。

語法 — どう使うか ▼

listen up は「(みんな)よく聞いて」と注意を引くときの命令形。Listen up, everyone! の形で、教室・スポーツ・職場の号令として日常的に使われる。同じく up で強める仲間に speak up(もっと大きな声で)、hurry up(急いで)などがある。

can be anything(何にでもなれる)は、可能性を語る定型。You can be anything you want はこの曲のメッセージそのもので、子供への励ましの決まり文句として英語圏で広く使われる。

in God we trust — ドル紙幣に刻まれた標語

★ 文化(米国の標語)
Nas(Verse 1) ≈0:36

You can be anything in the world, in God we trust
An architect, doctor, maybe an actress

世界で何にだってなれる、in God we trust(神を信じて)/建築家、医者、あるいは女優に

▶ Verse 1の冒頭、なれる職業を並べていく件。学習対象は上の行の行末。

行末の in God we trust は、ただの言い回しではありません。これはアメリカ合衆国の公式の標語(national motto)で、ドル紙幣や硬貨に必ず刻まれているフレーズです。直訳は「我ら神を信ぜり」。Nasはこれを「何にでもなれる」という励ましのすぐ後ろに置くことで、子供たちの夢と、お金(ドル紙幣)と、信仰を一本の線でつないでいる。アメリカという国の建前そのものを引用して、「この国は本来お前たちの夢を支えるはずだ」と背中を押す、なかなか皮肉も効いた一節です。続く architect / doctor / actress という具体的な職業の列挙も、子供にイメージさせるための工夫。

the company you keep — 「付き合う仲間」を表すことわざ的表現

★ イディオム(ことわざ)
Nas(Verse 1) ≈1:06

Watch the company you keep and the crowd you bring
'Cause they came to do drugs and you came to sing

付き合う仲間(the company you keep)と連れてくる連中には気をつけろ/奴らはヤクをやりに来た、お前は歌いに来たのに

▶ Verse 1の終盤、ドラッグで身を持ち崩した歌手の話を教訓にまとめる件。学習対象は上の行。

ここでの the company you keep がポイント。company は「会社」ではなく「付き合う相手・仲間」の意味。keep company で「交際する・つるむ」を表し、the company you keep はそのまま「お前が付き合っている連中」。英語には「A man is known by the company he keeps(人は付き合う仲間で分かる)」という有名なことわざがあり、この行はそれを下敷きにしています。続く the crowd you bring(連れてくる集団)も同じ警告の言い換え。'Causebecause の短縮で、理由「奴らは drugs をしに、お前は sing しに来た(目的が違う)」を bring / sing の韻で締めている。

語法 — どう使うか ▼

keep company (with ~) は「(〜と)付き合う・行動を共にする」。Watch the company you keep は「付き合う相手を選べ」という定番の忠告で、英語の説教・道徳の場面で頻出する。company を「会社」とだけ覚えていると意味を取り違えるので、「(一緒にいる)人・仲間」の語義をセットで押さえておきたい。

like Oprah Winfrey — 成功の象徴としての固有名詞

★ 文化(ロールモデル)
Nas(Verse 2) ≈1:48

You can host the TV, like Oprah Winfrey

テレビの司会だってできる、オプラ・ウィンフリーみたいに

▶ Verse 2、背伸びする少女に「本当の成功はこっちだ」と示す件。

ここで学びたいのは like Oprah Winfrey という固有名詞の使い方です。Oprah Winfrey(オプラ・ウィンフリー)は、貧困の中から世界一有名なトーク番組の司会者・実業家にのぼりつめた黒人女性。アメリカでは「努力で成り上がった成功者」の代名詞そのものです。Nasは「クラブで偽のIDを使う」ような背伸びではなく、「オプラのようにテレビの司会者になれる」という本物のロールモデルを示して対比させている。英語では、こうして実在の有名人を like + 人名 で引いて「〜みたいになれる/〜のようだ」と例える表現が非常によく使われます。host the TVhost(〜の司会をする)も覚えておきたい動詞。

act your age — 「歳相応に振る舞え」のイディオム

★ イディオム
Nas(Verse 2) ≈1:54

So act your age, don't pretend to be
Older than you are, give yourself time to grow

だから歳相応に振る舞え、背伸びするな/実年齢より上のフリをせず、成長する時間を自分にあげろ

▶ Verse 2、急いで大人になろうとする子供への忠告。学習対象は上の行頭。

act your age は「年齢にふさわしく振る舞え=子供っぽい(あるいは背伸びした)真似をやめろ」という定番イディオム。直訳すると「お前の歳を演じろ」で、act が「(〜のように)振る舞う」を表します。ふだんは子供っぽい大人をたしなめるのに使うことが多いのですが、ここでは逆で、大人ぶる子供に「実年齢のままでいろ」と諭している。続く don't pretend to be older than you are(実際より年上のフリをするな)が、その意味をやさしく言い換えてくれています。give yourself time to grow(成長する時間を自分に与えろ)も、そのまま使える温かい励ましの言い回し。

語法 — どう使うか ▼

act your age は命令形で使う決まり文句。基本は「いい歳して子供じみた真似をするな」という叱責(Stop crying and act your age!)。一方この曲のように、若者に「背伸びせず歳相応でいろ」と諭す向きにも使える。どちらの向きかは文脈が決める。

pretend to ~(〜のフリをする)も頻出。pretend to be older(年上のフリをする)、pretend to know(知ったかぶりをする)のように pretend to + 動詞 で使う。

We were kings and queens — アフロセントリックな歴史語り

★ 文化(歴史・思想)
Nas(Verse 3) ≈2:45

Before we came to this country
We were kings and queens

この国(アメリカ)に連れてこられる前/俺たちは王であり、女王だった

▶ Verse 3の冒頭、視点が現代から奴隷制以前のアフリカへ飛ぶ転換点。

ここからNasの語りは歴史へ飛びます。we were kings and queens(俺たちは王であり女王だった)は、アフロセントリズム(アフリカ中心主義)の核心的なフレーズ。奴隷としてアメリカに連れてこられる前、アフリカには クシュ王国(Kush)や、学問の都として栄えた ティンブクトゥ(Timbuktu)といった高度な文明があった、という史実を引いて、黒人の子供たちに「お前たちのルーツは奴隷ではなく王だ」と誇りを取り戻させようとしている。なお、このバースには学術的に議論のある主張(アレクサンドロス大王のくだり等)も混じります。歴史の正確さというより、"何のために語っているか"、子供たちの自己肯定感を立て直すための物語として受け取るのが、この曲の正しい聴き方だと思います。

Read more, learn more — 命令形を畳む並列構文

★ 文法(並列・命令形)
Nas(Verse 3) ≈3:25

Nobody says you have to be gangstas, hoes
Read more, learn more, change the globe

ギャングや尻軽になれなんて誰も言ってない/もっと読め、もっと学べ、世界を変えろ

▶ Verse 3後半、Nasが子供たちに進むべき道を直接示す件。学習対象は下の行。

下の行 Read more, learn more, change the globe に注目。これは命令形(動詞で始まる文)を3つ並べた並列構文です。Read more(もっと読め)→ learn more(もっと学べ)→ change the globe(世界を変えろ)と、同じ形をリズムよく畳むことで、メッセージが標語のように耳に残る。英語では 命令形+more を重ねるこの型がスローガンの定番(Do more, be more など)。change the world ではなく change the globe としたのは、上の行の hoesglobe で韻を踏むため。意味と音、両方を成立させる選語です。教育(読む・学ぶ)を救いの道として真ん中に置くのが、この曲の一貫した立場です。

You're a king — 一人ひとりを王と女王に戻す結び

★ 表現/サンプル連動
Nas(Verse 3 結び) ≈3:32

Hold your head up, little man, you're a king!
Young princess, when you get your wedding ring...

顔を上げろ、少年、お前は王なんだ!/若き王女よ、いつか結婚指輪をはめるとき…

▶ 曲の結び。Verse 3冒頭の「kings and queens」を、一人ひとりへの呼びかけで回収する件。

曲のしめくくり。Hold your head up(顔を上げろ・胸を張れ)は、うつむくな・誇りを持てという定番の励まし表現です。そして you're a king(お前は王だ)で、Verse 3 冒頭の「俺たちは王であり女王だった」を、今を生きる一人の少年へと回収する。続く young princess(若き王女)への語りかけも対になっていて、男の子は king、女の子は queen/princess へと戻される。この直後にNasが歌う「She's my Queen」は、映画『星の王子ニューヨークへ行く(Coming to America)』の劇中歌「She's Your Queen-To-Be」を下敷きにしたもの。hold ~ up(〜を上げて保つ)という句動詞ごと、前向きな締めの言葉として覚えておきたい一節です。

文化的背景

コンシャス・ヒップホップ

子供に向けて作られた、異色のヒット曲

ヒップホップには、社会や人生のメッセージを前面に出すコンシャス(意識的)な系譜がある。「I Can」はその中でも、はっきりと子供をターゲットにしたという点で異色だ。

露骨な言葉を排し、合唱団の子供たちにフックを歌わせ、ラジオや学校でもかけられる作りにした。挑発やパーティではなく、「ドラッグに近づくな」「背伸びするな」「学べ」という親や教師のようなメッセージで、ビルボードHot 100の12位という大ヒットを記録した。

社会的メッセージと商業的成功を両立させた、Nasのキャリアでも特別な一曲です。

キーワード早見表

この曲で学んだ表現の整理

listen up よく聞いて・注目して(命令)。教室や号令の定番
the company you keep 付き合う仲間。companyは「会社」でなく「交友相手」
act your age 歳相応に振る舞え。背伸び/子供じみた言動の両方をたしなめる
work hard at ~ 〜に熱心に取り組む。atが努力の対象を指す
kings and queens アフロセントリズムの核フレーズ。奴隷以前の誇りの象徴
wanna / gonna want to / going to の口語短縮。歌詞・会話で頻出

サンプル・制作の裏側

サンプル元(メロディ)

誰もが知るピアノ — ベートーヴェン「エリーゼのために」

この曲の顔は、なんといってもあのピアノ。ベートーヴェン「エリーゼのために」(Bagatelle No. 25, 1810) の、ピアノを習った人なら一度は弾くあの旋律をそのまま土台にしている。

プロデューサーの Salaam Remi は、世界中の誰もが知っているクラシックを敷くことで、子供にも大人にも、国や世代を越えて一発で届く"つかみ"を作った。重いテーマを語る曲だからこそ、入口は最高に親しみやすく、という設計が効いています。

サンプル元(ドラム/声)

最も有名なドラムブレイク+映画からの「Queen」

ピアノの下で叩いているドラムは、ヒップホップ史上最もサンプリングされたブレイクのひとつ、The Honey Drippers「Impeach the President」(1973)。無数の名曲を支えてきた、いわば"黄金の8小節"だ。

さらに曲の最後、Nasが歌う「She's my Queen」は、エディ・マーフィ主演の映画『星の王子ニューヨークへ行く(Coming to America, 1988)』の劇中歌「She's Your Queen-To-Be」を引いたもの。クラシック・名ブレイク・映画ネタを一曲に重ね、しかも嫌味なく子供向けに仕上げる、Salaam Remiの編集センスが光ります。

締めのひと言

「Save the music」という outro

曲の最後で繰り返される「Save the music(音楽を守れ)」という outro は、学校から音楽の授業が削られていく状況への、ささやかな抵抗のメッセージでもある。

子供たちが何かを表現する手段(歌や音楽)を奪わないでほしい、という願い。曲全体が「学べ・誇りを持て」と言い続けた最後に、「その入口になる音楽を消すな」と置くこの締め方に、Nasの一貫した姿勢が出ています。

評価とその後の影響

指標
記録
意義
US Billboard Hot 100
最高12位
Nasのソロ最大級のヒットシングル。社会的メッセージ曲としては異例の商業的成功
アルバム
『God's Son』(2003) 収録
父Olu Daraとの関係や母の死を経た時期の作。その中で唯一、子供に向けた光の曲
Parental Advisory
なし(クリーン)
アルバムで唯一警告ラベルが付かず、学校やラジオでかけられる作りに

後世への評価

教室で流せるヒップホップ

露骨な表現が問題視されがちなジャンルにあって、「I Can」は親や教師が安心して子供に聴かせられる数少ないヒップホップのヒット曲として、長く特別な位置を保っている。

英語学習の入口としても、ヒップホップへの入口としても、これほど間口の広い曲は珍しい。込み入ったスラングを学ぶ前に、まずこの曲で「ラップの英語って案外ちゃんと聞き取れる」という成功体験を持つ、そんな使い方ができる一曲だと思います。

まとめ

  • 「I Can」は歌詞が平易でクリーン、Nasがゆっくり語りかけるので、ヒップホップ英語の"最初の一曲"に最適。
  • modal can・listen up・the company you keep・act your age など、日常で本当に使う英語とイディオムがそのまま学べる。
  • Verse 3の「kings and queens」はアフロセントリズムの核。史実と物語が混じるので「何のために語るか」で読む。
  • 土台はベートーヴェン「エリーゼのために」+名ブレイク「Impeach the President」。Salaam Remiの間口の広い設計が効いている。

もっと深く

背景を読む

制作の裏側・時代背景・評価の詳細は、各コラムで掘り下げている。

アーティストについて

Nas

Queensbridge, New York · 1991–

クイーンズブリッジ出身のNasir Jones。1994年「Illmatic」でデビューし、歌詞の密度と詩的表現力でヒップホップ文学の地平を開いた。

この曲とつながる記事

[PR] この曲の中古盤・グッズをメルカリで探す