この記事の見どころ
(Another Pete Rock remix, uh)
(また一つ、ピート・ロックのリミックスのお出ましだ、uh)
To the 「Hip Hop」をDas EFX特有の崩し方で表現。オールドスクールのスキャット「hip, hop, the hibbit」系譜と「イギディ」スタイルの融合 ya don't stop (Don't stop)
Das EFX with the real hip-hop (Hip-hop)
To the hiddip the hop ya don't quit (Don't quit)
Das EFX and we came to 場を完全にロックする、凄まじいパフォーマンスをする。「Rip the mic(マイクを切り裂く)」と同義の攻撃的な賛辞 (Rip shit)
ヒディップ・ザ・ホップ(ヒップホップ)、絶対に止めるな(止めるな)
Das EFXがリアルなヒップホップと共にやってきたぜ(ヒップホップ)
ヒディップ・ザ・ホップ、絶対に諦めるな(諦めるな)
Das EFX、俺たちはこの場を切り裂くために来たんだ(切り裂くぜ)
Well on your mark and get set, can't forget to go
In case you didn't know the flow is Fat Joe(NYブロンクス出身の巨漢ラッパー)へのシャウトアウト。同時に90年代の褒め言葉「Fat/Phat(最高・重厚)」とのダブルミーニング (Like Joe)
さて、位置について、よーい、出発するのを忘れるなよ
知らないなら教えてやる、俺のフロウはFat Joe(ファット・ジョー)のようにブ厚いぜ
★ Pac-Man——日本発のメタファー
Yo, you niggedy-know that I'm back, man
You're ダサい、偽物、実力がない。ヒップホップにおいて「Real」の対極に位置する最も屈辱的な形容詞 man, I eat a rapper like I'm 日本のナムコ(現バンダイナムコ)が1980年に発売したアーケードゲーム。敵を次々と無慈悲に飲み込む無双状態のメタファーとして90年代のラッパーに多用された
Yo、俺がシーンに戻ってきたってこと、お前もよーく分かってるだろ
お前はダサい(wack)んだよ。俺はパックマンのようにフェイクなラッパーを次々と食い散らかすぜ
I briggedy-bring it, straight from the 地下室=アンダーグラウンドの底辺。「Sewer(下水道)」と並ぶDas EFXの自己表現の核心。エリートではなく地底から這い上がった者のプライド
Fo' realla, packin' more hits than 元NYヤンキースの選手・監督。野球の「Hit(安打)」と音楽の「Hit曲」を掛けたインテリジェントなネームドロップ
俺はブチかましてやるんだ、アンダーグラウンドの底辺(地下室)から真っ直ぐにな
マジな話、ルー・ピネラ(名監督)よりも多くのヒット(曲)を量産してるんだぜ
I swell a, nigga in his eye if he test me
You don't impress me, a-yo Skoobのこと。自身の名前「Skoob」を逆から綴ると「Books」になる言葉遊び。三人称で呼ぶボースティング(自慢)手法 kick the rest, G
俺を試そうと近づく奴がいれば、そいつの目をぶん殴って腫らしてやるよ
お前じゃ俺の心は動かせない。A-yo、Books(Skoob)、残りを任せたぜ、G
Ayo, what up? It's the crew bringing the 騒動・喧騒。圧倒的なエネルギーで大騒ぎを巻き起こすこと。Wu-Tang Clan「Bring Da Ruckus」でも知られる , no doubt
We's the roughest dream team, Reign Supreme like a オールズモビル・カトラス(Oldsmobile Cutlass)。当時のフッドにおいて成功したハスラーやラッパーが乗る象徴的なステータスシンボル
Ayo、調子はどうだ? 騒動(ruckus)を巻き起こすクルーの登場だ、間違いねえ
俺たちは最高に荒々しいドリームチームだ。カトラス(名車)のように頂点に君臨するぜ
Getting 金・現金のスラング。中世ヨーロッパの金貨「Ducat(ダカット)」が語源。90年代のストリートで「稼ぎ・富」を意味した , the dough, you can't touch the flow
It's me, the nigga wit' G, the B double O K-S
ダケッツ(金)を稼ぎまくる。お前らじゃこのフロウには触れることすらできない
俺のことだ、G(ギャングスタ)の心を持った男、B-O-O-K-S(Skoob)だ
★ Metallicaとのクロスジャンル比喩
So say yes and bust your caliber
When I pop shit and rock shit like ヘヴィメタルバンド。ヒップホップがいかに他ジャンルのアグレッシブなエネルギーを吸収し、異種格闘技的な比喩を用いていたかを示す
だから「イエス」と言って、お前のキャリバー(銃口/実力)をぶっ放してみろよ
俺が言葉を放ち、メタリカのようにハードにこの場をロックする時にはな
Stakes through the hearts of them snake fake niggas
Them all up in my face, jealous of my tape niggas
So honey shake your figures and show me whatcha got (Blow the spot)
Das EFX with the Real Hip-Hop
蛇みたいなフェイク野郎どもの心臓に、無慈悲に杭(ステークス)を打ち込んでやる
俺の顔色を窺って、俺のテープ(音源)に嫉妬してる奴らさ
だからハニー、その体を揺らして、お前の魅力を見せてみろ(この場を爆発させるぜ)
Das EFXとリアル・ヒップホップの圧倒的な登場だ
To the hiddip the hop ya don't stop (Don't stop)
Das EFX with the real hip-hop (Hip-hop)
To the hiddip the hop ya don't quit (Don't quit)
Das EFX and we came to rip shit (Rip shit)
(Uh, yeah, one time)
ヒディップ・ザ・ホップ、絶対に止めるな(止めるな)
Das EFXがリアルなヒップホップと共にやってきたぜ(ヒップホップ)
ヒディップ・ザ・ホップ、絶対に諦めるな(諦めるな)
Das EFX、俺たちはこの場を切り裂くために来たんだ(切り裂くぜ)
(Uh、yeah、まずはお前の脳天に一発)
Eh okiedokie next nigga ta quote me
I hope he got more miracles than スモーキー・ロビンソン(Smokey Robinson)。彼のグループ名「The Miracles」と「奇跡(Miracle)」を掛けたパンチライン
Eh、オキドキ(了解だ)、次に俺の言葉をコピーしようとする奴は
スモーキー・ロビンソン(とその「Miracles」)よりも多くの「奇跡」を持ってることを願うぜ
★ Sewer→Topへ——ストリートの上昇の物語
Won't be no discussion, strictly 問答無用で強行突破すること。90年代ヒップホップで「圧倒的な勢いで場を制圧する」を意味するスラング
Head rushin' like ニューヨークのマフィアのボス、ジョン・ゴッティ。「Head(頂点)」に向けて突き進む勢いを、犯罪組織のトップへの登り詰めに例えた , your in my コメディアンのロドニー・デンジャーフィールド。彼の決め台詞「I get no respect(俺は敬われない)」と「Danger(危険地帯)」を掛け、相手の無防備さを嘲笑
議論の余地なんてねえ。問答無用で厳格に強行突破(バムラッシュ)するだけだ
ゴッティ(マフィアのボス)のようにトップへ駆け上がる。お前はロドニーのように俺の「デンジャー・フィールド(危険地帯)」に迷い込んだんだぜ
So Howdy, let me introduce for my peeps
Straight from the 下水道=アンダーグラウンドの底辺。Das EFXが繰り返し使う「地底から這い上がった者」のプライドの象徴。『Hold It Down』というアルバムタイトルとも連動する sayin' true to the streets
だから「ハウディ(よろしく)」、俺の仲間(peeps)たちに紹介させてくれ
下水道(アンダーグラウンドの底辺)から直送、ストリートの現実に忠実であり続けるぜ
Well it's me, Crazy Drayzy, bringin' up the rear
I swear we got to 場を支配する・持ち堪える。アルバムタイトル『Hold It Down』に直結するリリック。ストリートで仲間のために踏み止まることも意味する here, yeah
そうさ、俺が最後尾を固めるクレイジー・ドレイジーだ
誓って言うぜ、俺たちはここで「Hold It Down(場を支配する/持ち堪える)」しなきゃならねえんだ、yeah
So there, let me crack a brew and kick my feet up
Turn the heat up and smiggedy smoke all the weed up
だから…ビール(brew)の缶を開けて、足を投げ出してリラックスさせてくれ
熱気を上げて、極上のウィードを全て吸い尽くしてやるよ
★ Sewer→Top——上昇の宣言
Kids I beat up wit' my style, that's the newest
My crew is runnin' more ruckus than 陸上競技の世界的金メダリスト。「Runnin' the ruckus(騒動を走らせる)」の「Run(走る)」と物理的に走る速さを掛けている
It's from the sewer, now ya see me on tha top
So stop and recognize the niggas on ya block
ガキどもを俺の最新スタイルで完膚なきまでに叩きのめしてやる
俺のクルーはカール・ルイスよりも速く、デカい騒動(ruckus)を巻き起こしてる
下水から這い上がり、今や俺は頂点にいる。お前らにも見えるだろ
だから立ち止まって、お前のブロック(地元)にいる本物たちを認識(リコグナイズ)しな
Yo, MC's is irrelevant and delicate to the texture
And this style of mines is well...
Yo、他のMCどもなんて俺たちには無関係だ。俺の質感(テクスチャー)に比べりゃ繊細すぎるぜ
それに、俺のこのスタイルは、そうだな…
★ Jack Dempsey——最後の一撃
I throw a screwball and strike out the MC
And if he temps me, I knock 'em out like 1920年代の伝説的プロボクサー。ライバルMCをリング上の敵に見立て、パンチラインの破壊力を一撃KOに例えた
俺はスクリューボール(変化球)を投げて、MCどもを鮮やかに三振に打ち取るんだ
もしそいつが俺を試そうとするなら、ジャック・デンプシーのように一撃でノックアウトしてやるぜ
イーストコースト・ルネッサンス
Nasの『Illmatic』(1994)、BIGの『Ready to Die』(1994)、Wu-Tang Clanのソロ作品群がシーンのハードルを極限まで引き上げる中、Das EFXはデビュー期の代名詞「イギディ・フロウ」が「一過性のギミック」として消費される危機に直面していた。彼らが選んだ答えは「スタイルの進化」——ギミックに固執せず、よりソリッドで鋭角的なライミングで「本物(Real)」を証明することだった。
日本との繋がり
1995年当時、東京・渋谷の「レコード村(シスコ、マンハッタンレコード等)」においてDJ Premierのオリジナル版とPete Rock Remixを収録したマキシシングルは入荷即完売。DJたちは2枚使いでフロアを毎晩揺らし続けた。さらにミュージックビデオで着用されたCarhartt(カーハート)のダック地ジャケット、Timberland(ティンバーランド)のイエローブーツ、迷彩柄のニットキャップは90年代後半の日本の「Bボーイ・ファッション」の教科書として機能した。
キーワード解説
制作秘話 01
Das EFXを見出したEPMD(Erick SermonとParrish Smithによるデュオ)の解散騒動の余波の中で制作された。Das EFXはPMD(Parrish Smith)側についてアルバムを制作——この内部の緊張感が『Hold It Down』全体を覆うシリアスでタフな空気感を生み出している。「Real Hip-Hop」はそのタフな現実の中でアーティストとして「Hold It Down(踏み止まる)」決意の表明でもあった。
制作秘話 02
DJ PremierはYouTube番組「So Wassup?」エピソード21でこの楽曲の制作プロセスを自ら解説している。Premierの手法の核心は、サンプリングソースのメロディラインを細かくチョップ(切り刻み)して全く新しいフレーズとして再構築すること。Das EFXのデビュー期のコミカルなイメージを払拭し、よりハードでダークな世界観を構築するための「完璧なキャンバス」を提供した。
制作秘話 03
Pete RockはE-mu SP-1200(12ビットの伝説的サンプラー)特有の太く跳ねるようなドラムの質感に、深く沈み込むソウルフルなホーン・サンプルを注入。イントロで囁く「Another Pete Rock remix, uh」という一言は、コアなリスナーにとって「絶対的な品質保証のスタンプ」として機能した。コーラス部分でスクラッチされる声ネタの正確な出所は公式クレジットに記載されていないが、この「声ネタをターンテーブルで擦ってサビを構築する」手法自体が、当時の東海岸ヒップホップにおける「Real」の証明だった。
後世への影響
Das EFXは「Real Hip-Hop」を通じて、自らの最大の武器であった「イギディ・スタイル」というギミックに固執せず進化できることを証明した。スポーツ界のレジェンド、コメディアン、ヴィンテージカー、マフィアのボスに至るまで多岐にわたるメタファーを駆使したパンチラインは、彼らが「早口のギミック・ラッパー」ではなく知性を持つリリシストであることの証明だった。
Das EFX
Brooklyn, New York · 1990–
Dray(Andre Weston)とSkoob(William Hines)によるデュオ。DJ Premier系のブーンバップと独特のフロウスタイルで90年代中盤を代表した。