この記事の見どころ
Here we go, yo, here we go, yo
So what, so what, so what's the scenario?
Here we go, yo, here we go, yo
So what, so what, so what's the scenario?
いくぞ、ヨー、いくぞ、ヨー
で、どうなんだ、結局どういうシナリオ(状況)なんだ?
いくぞ、ヨー、いくぞ、ヨー
で、どうなんだ、結局どういうシナリオ(状況)なんだ?
A-yo, 1989年のNike広告キャンペーン。MLB・NFL両方で活躍したBo Jacksonの万能性を指す90年代初頭の象徴的フレーズ this and Bo knows that
But Bo 「何一つ分かっていない、無知だ」。Jack shit(全くの無)から派生したアメリカ口語。Bo Jacksonでもラップのことは全く分からないというユーモア , 'cause Bo can't rap
エイヨー、ボー・ジャクソンはこれを知ってる、あれも知ってる
でもボーはラップのことは何一つ分かっちゃいない、アイツはラップできないからな
Well, what do you know? The Diggy-Dawg is first up to bat
No batteries included, and no strings attached
さて、お前ら分かってるか? ディギー・ダウグ(Phife)が最初のバッターだ
電池は別売り(自分の力だけで動く)、そして何のしがらみ(条件)もないぜ
No holds barred, no time for フェイクな動き、ポーズを取ること。実力のないMCが虚勢を張る行為を指す
Gots to get the loot so I can 「家族を養う、大きな富を稼ぐ」。12世紀英国の伝統や1920年代のボクシング興行に由来とされる慣用句
反則なしの全力勝負、フェイクな動きをしてる暇はねえ
金(loot)を稼がなくちゃな、家族に飯を食わせるために
Brothers front, they say the Tribe can't flow
But we've been known to do the impossible like ニューヨーク・ジェッツのQB、Joe Namathの愛称。1969年第3回スーパーボウルで大番狂わせの「勝利宣言」を的中させた伝説。NY特有のスポーツ・リファレンス , so
ブラザーたちは虚勢を張って、トライブにはフロウがないなんて抜かす
だが俺たちは不可能を可能にすることで知られてる、ブロードウェイ・ジョーのようにな
Sleep if you want, アメリカで普及している市販の睡眠導入剤のブランド名 will help you get your 漫画の「Zzz」から「睡眠」を意味するスラング , troop
But here's the real scoop
寝たけりゃ寝ろよ、Nytol(睡眠薬)がお前の眠りを助けてくれるぜ、兵士くん
でもここからが本当のスクープ(特ダネ)だ
★ Phife Dawgの自己紹介
I'm all that and then some; short, dark, and handsome
元々は男性の射精を意味する下品なスラングだが、ここでは「強烈な一撃を見舞う、実力を叩き込む」という暴力的比喩として転用 inside your eye to show you where I come from
俺は完璧以上——背が低くて、肌が黒くて、ハンサムだ
お前の目に一発ぶち込んでやる、俺がどこから来た男か(どれだけヤバいか)を分からせるために
I'm vexed, fumin', I've had it up to here
My days of payin' dues are over, acknowledge me as in there
俺は苛立ち、怒り狂い、もう我慢の限界だ
下積みの時代は終わった、俺が頂点にいると認めな
Head for the border, go get a taco
Watch me wreck it from the 「物事の最初から、初っ端から」を意味するAAVEスラング , meanin' from the 「最初から」を意味するスラング。jump streetと同義で使われている
Sit back relax and let the A Tribe Called Questのこと。地球上の全人類を「部族」として包括するアフロセントリックなコンセプト flow, yo, sit back relax and let the Tribe flow
国境に向かえ、タコスでも食ってな(ここは俺らのシマだ)
俺が最初っからぶち壊すのを見てな、つまり初っ端からってことだ
座ってリラックスしてトライブのフロウに身を委ねろ、ヨォ
Here we go, yo, here we go, yo
So what, so what, so what's the scenario?
Here we go, yo, here we go, yo
So what, so what, so what's the scenario?
いくぞ、ヨー、いくぞ、ヨー
で、どうなんだ、結局どういうシナリオなんだ?
いくぞ、ヨー、いくぞ、ヨー
で、どうなんだ、結局どういうシナリオなんだ?
Yo, I came up in the era when 1989年から放送された『The Arsenio Hall Show』のこと。当時の黒人エンターテイナーやヒップホップ・アーティストにとって最重要な登竜門 was large
Them big ハンナ・バーベラ・プロダクションの1970年代のアニメ『The Great Grape Ape Show』の巨大な紫色の類人猿キャラクターからの引用。巨大で強力なものの比喩 were all in charge
ヨォ、俺はアルセニオ(・ホールのショー)がでっかかった時代に出てきた
あのでかいグレイプ・エイプ(巨人たち)が全部を仕切ってた
I used to watch 'em on TV and wonder what they sayin'
Now I'm at the point and I'm the one who's swayin'
My body rocks when the music is bumpin'
My mind's clear and I'm in tune with somethin'
昔はテレビでそいつらを見て、何を言ってるのか不思議に思ってた
今は俺がその立場で、揺らしてやる番だ
音楽が鳴り響けば俺の体はロックする
頭が澄み渡って、何かと同調してる
Hit the whole nation, from NY to ノースカロライナ州を指すAAVE特有のリズミカルなスラング。NY、コンプトンと並べて全米制覇を誇示
And out to Compton, no doubt we're gonna rock ya
国中をヒットした、NYからノース・カカラカ(ノースカロライナ)まで
コンプトンまで——間違いなく俺たちはお前らをロックする
I look at life from a positive standpoint
Let me paint you a picture 'cause you seem joint
The clouds are parting, I see a rainbow
It's Leaders and Tribe on the same bill, yo
俺は人生をポジティブな観点から見てる
お前らのために一枚の絵を描いてやろう、お前らには見えてるようだから
雲が晴れて、虹が見える
リーダーズとトライブが同じステージに立ってる、ヨォ
I was a shorty who was once down and out
But now I'm back, and I know what I'm about
Yo, I roll with the punches, no time for the bull
Step up to Dinco and you'll get your skull full
俺はかつてどん底にいたガキだった
でも今は戻ってきて、自分が何者かを分かってる
ヨォ、俺はパンチをかわしながら進む、くだらないことに時間はない
Dincoに挑んでみな、頭の中がいっぱいになるぞ(やられるぞ)
Yo, microphone check one two, what is this?
The five footassassin with the roughneck business
I float like gravity, never had a cavity
Got more rhymes than the Cavs got Budweiser at the Cavalier
ヨォ、マイクチェックワンツー、これは何だ?
五フィートのアサシン(刺客)がラフネック・ビジネスを持ってきた
俺は重力のように漂う、虫歯は一本もない(完璧だ)
キャバリアーズのスタジアムでバドワイザーが売れるより多くのライムがある
I'm just a fly MC, the original on the case
And I'ma let the music take me to another place
So sit back relax and let the Tribe flow
Kick off your shoes and let your feet show
俺はただのフライ(イケてる)なMC、この件のオリジナルだ
そして音楽が俺を別の場所へ連れて行くままにする
だから座ってリラックスしてトライブのフロウに身を委ねな
靴を脱いで足を見せろ(完全にリラックスしろ)
★ 歴史を変えた19歳のヴァース
ROAAAWR!
When I go to battle I never flee
That's 'cause I got the gift of the gab and I was born to MC
Busta Rhymes and Leaders of the New School, wreckin' it proper
You better keep your eyes open 'cause we do not stop, uh
ROAAAWR!(咆哮)
バトルになれば俺は絶対に逃げない
なぜなら俺には話術の才能があり、MCとして生まれてきたからだ
バスタ・ライムスとリーダーズ・オブ・ザ・ニュー・スクール、完璧にぶち壊す
目を開けたほうがいいぞ、俺たちは止まらないからな
★ Dungeon Dragon — ヒップホップ史のミーム誕生
I got a question, a question, are you ready for the scenario?
Yo, it's the coming of the Busta Rhymesを象徴する代名詞的フレーズ。後にEminemやNicki Minajなどにサンプリング・引用され、ヒップホップ史のミームとなった
Rawr rawr, like a dungeon dragon
Change your little drawers because your pants are saggin'
俺に質問がある、質問がある、お前はシナリオの準備ができてるか?
ヨォ、ダンジョン・ドラゴン(地下牢の龍)がやってくる
ガオォォ、ガオォォ、ダンジョン・ドラゴンのように
下着を変えたほうがいいぞ、お前のズボンが垂れ下がってるからな(漏らしてるぞ)
Rrrrrrrahh, let me show you what it's all about
On Tribe, make sure you don't shout when I'm spittin' out
Cause when I get to spit these words, they'll make you frown
It's Busta Rhymes rippin' it down and putting it down
ラァァァ、全てがどういうことか俺が見せてやる
トライブの上で、俺がスピットしてる時は叫ぶなよ
俺がこれらの言葉を吐き出す時、お前らは眉をしかめるだろうから
バスタ・ライムスがぶち壊して、叩き込む
Here we go, yo, here we go, yo
So what, so what, so what's the scenario?
(Repeat / fading out...)
いくぞ、ヨー、いくぞ、ヨー
で、どうなんだ、結局どういうシナリオなんだ?
(繰り返し / フェードアウト...)
Native Tonguesムーブメント
1980年代後半から1990年代にかけて、ATCQ・De La Soul・Jungle Brothers・Black Sheep・Leaders of the New Schoolらが形成した緩やかなコレクティブ「Native Tongues」。西海岸のギャングスタ・ラップが描く暴力・犯罪・ミソジニーに対抗し、アフロセントリズム・ジャズ・ファンク・詩的言語遊戯を武器としたムーブメント。「Scenario」はそのポッセ・カット形式の頂点であり、Native Tonguesの「競争ではなく共鳴」の精神を体現する。
ポッセ・カット(Posse Cut)とは
複数のMCが順番にヴァースを担当するフォーマット。1980年代のDJパーティーで生まれ、NN: 「Scenario」では5人のMCがそれぞれ全く異なるスタイルとエネルギーでリレー——Phife Dawgのユーモア、Charlie Brownのグルーヴ、Dinco Dの叙情性、Q-Tipの知性、そしてBusta Rhymesの爆発力——が一曲に凝縮されることで、単独アーティストでは到達できない多層的なダイナミズムを生み出した。
キーワード解説
制作秘話 01
初期のレコーディング・セッションには現在のメンバー以外にも、Black SheepのDres&Mr. Long、De La SoulのMase&Posdnuos、Chris Lightyらが参加していた。当時のビートにはWilson Pickettの声ネタを含む合計15個ものサンプルが詰め込まれていた。
De La SoulのPosdnuosがブースに入った際、彼はビートの全サンプルをミュートしドラムのみをバックに凄まじいヴァースを蹴った。DJ Johnny Juiceの証言によれば、そのクオリティに他の全MCがショックを受け、リリックを急遽書き直す事態になったという。最終的にPosdnuosのヴァースはカットされ、LONSを中心とした現在の形に削ぎ落とされた。
制作秘話 02
Q-Tipはインタビューで「ドラムにはSP-1200、ループにはAkai S950を使っていた。SP-1200のブリキを叩くようなスナップ感のある大きなドラムの音が好きだった」と語っている。12ビット・サンプラー特有のザラついた質感が「Scenario」の爆発的なビートを支えており、この手法は後の「ブーム・バップ」サウンドのスタンダードとなった。
制作秘話 03
Jim Swaffieldが監督を務めたミュージックビデオは、当時最先端のインタラクティブなデスクトップUI風の視覚効果を採用。Spike Lee、De La Soul、Kid Capri、Brand Nubian、Fab Five Freddy、Redmanらがカメオ出演し、当時のNYヒップホップ・コミュニティの連帯——Native Tonguesの精神——を視覚的に証明する歴史的ドキュメントとなっている。
日本との繋がり
ATCQは1990年代を通じて日本でも精力的にライブ活動を展開。彼らの代表作『The Low End Theory』の日本盤CDにはUSオリジナルにはないボーナストラックが追加収録された。2016年の事実上のラスト・アルバム『We Got It from Here... Thank You 4 Your Service』に収録された「Conrad Tokyo」(feat. Kendrick Lamar)は、過去の日本ツアー時に滞在したホテル「コンラッド東京」の記憶から命名された。東京は、現代アメリカの政治的混乱(トランプ政権下)と対比するための重要なメタファーとして機能している。
A Tribe Called Quest
Queens, New York · 1985–2016
Q-Tip、Phife Dawg(2016年死去)、Ali Shaheed Muhammad、Jarobi Whiteによるクルー。ジャズとヒップホップを融合したレイドバックなサウンドでジャンルの地平を拡げた。